質の高い小説を書くために、チェックすべき意外なポイント!
テーマを決め、プロットを作り、小説を書き上げ、さあ投稿……!
その前に、自分で何度も読み直して誤字脱字などをチェックしますよね?
ですが、あなたは本当に正しい推敲や校正の仕方を理解していますか?
この記事では、見落としがちなポイントについて解説します。
こんな方におすすめ
- 小説を書き上げて推敲中だけど自信がない
- プロがどんなポイントに気をつけて校正しているか知りたい
- 推敲に便利なツールがあるなら知りたい
小説を書くときの推敲ポイント1 単語近傍
単語近傍(たんごきんぼう)とは、書いた文章の近くに同じ単語が何度も出てくることです。
では、具体例を見てみましょう。
『小説推敲補助ソフト「Novel Supporter」』という無料のツールを使って、わかりやすいように色分けしました。
ここでは「多用」と「文章」という単語が近い位置で重複しています。
ブログ記事ならまだいいですが、投稿小説などの場合は「表現力が乏しい」と判断されてしまうかもしれませんし、単純にくどいです。
これはプロでも意外と見落としがちなポイントで、気づかずにやってしまっている人が結構います。
では、この文章を正しく修正してみましょう。
重複している部分を、ばっさりカットしてみました。
くどさがなくなって、とても読みやすくなったと思います。
もし削ることができない場合は、類語辞典を使って他の表現に置き換えましょう。
小説を書くときの推敲ポイント2 文末重複
文末重複は小学校の作文の授業でも教わるので、覚えている方も多いんじゃないでしょうか。
たとえばこんなふうに「~なる、せる、される」で終わる文が連続してしまうと、途端にテンポが悪くなってしまいます。
こういう場合は、以下のように修正するとぐっと文章の質がアップします。
基本的に、「~だった。~た」「~です。~ます」のように同じ文末を連続で使うことはNGです。
上記の例は極端な例なので誰でも文末が重複しているとわかりますが、これが1000文字、1万文字と増えていくと、だんだん目視ではチェックしきれなくなっていきます。
そういう場合は、無料のチェックツールを使いましょう。
色分けして警告を出してくれるので一目瞭然です。
小説を書くときの推敲ポイント3 こそあど言葉
こそあど言葉とは「これ、こう、ここ、それ、その、あれ、あの、どれ、どの、どっち、どんな」などの指示語のことです。
同じ単語が何度も重複して出てくることを避けるために、代名詞として使います。
小学校の国語のテストで「上記の文章で出てくる“これ”とは、どの単語を指しているか答えよ」のような問題を解いた記憶があるんじゃないでしょうか。
普段から文章を書いている人なら、こそあど言葉は適切に使えているはずですが、問題はその頻度です。
わざと極端に書いてみましたが、3行目の後半からが特にひどいです!
ひとつの文章の中に「その、その、あの」と、こそあど言葉が3回も入ってしまっています。
こそあど言葉が多数入ると、なぜダメなのか。
理由は簡単、読んでいる人の脳に、余計な処理を強要するからです。
こそあど言葉が多すぎる文章は、「えーと、ここで出てきている“この”っていうのは、PKをとられた時のことで、“その”っていうのはファールした選手のことで……」と、いちいち振り返って言葉を置き換えないと、内容が頭に入ってきません。
つまり、読み手に頑張ってもらわないと、内容を理解してもらえないということです。
あなたがどんなに面白く素敵なストーリーを書いていたとしても、こそあど言葉が多すぎてしまうと「もういいや、めんどくさい」と読者が途中で投げてしまうかもしれません。
上記の例のように複数使ってしまっていたら、削るか他の言葉で言い換えて下さい。
これも、書いている本人は多用している自覚がないことが多いので、ツールの手を借りてチェックすることをオススメします。
小説を書くときの推敲ポイント4 漢字を減らす
私たちは小説を書くとき、原稿用紙とペンではなくパソコンを使うようになりました。
簡単に修正やコピーができて、漢字も調べずに変換できます。
ですが「漢字を調べず簡単に変換できる」ことにより、思わぬ弊害が生じてしまいました。
文章内に含まれる漢字の比率が、圧倒的に増えてしまったんです!
書いている本人は「漢字が多いほうが頭がよさそうに見える」と思っているかもしれませんが、大きな間違いです。
こそあど言葉と同じように、漢字が多用されている文章も、読み手に余計なストレスを与えています。
これは、ツールを使って文字の画数が多いところを赤くしたものです。
中華ファンタジーモノのプロットから抜粋したので仕方ないですが、漢字の固有名詞が多過ぎるのがひと目でわかりますよね。
こういう文章に出会ったとき、読者は「これってなんて読むんだっけ?」という疑問を何度も抱くことになり、ストレスにつながります。
漢字を減らすことも大事ですが、画数が多い漢字も使いすぎてはいけません。
たとえば、あなたがこれから書く小説の主人公名を薔薇、パートナーの名前を檸檬と設定したら、どうなるでしょう。
先ほど使ったツールにかけるまでもなく、画面が真っ赤に染まるのは目に見えています。
文中に何度も出てくるキャラ名や固有名詞に画数が多い漢字を使うのは、なるべくさけましょう。
また、固有名詞以外にも気をつけるべき点があります。
共同通信社から出版されている『記者ハンドブック』などで、漢字を使用しないほうがいいと定められている言葉についてです。
漢字をひらがなに直すことを、業界用語で「ひらく」と言いますが、具体的にどういったものをひらがなにすべきなのか。
『記者ハンドブック』には、このように書かれています。
次の各項に当てはまる場合は、原則として平仮名書きを主体とする。代名詞、連体詞、接続詞、感動詞、助詞、助動詞、補助用語、形式名詞は平仮名を主体とし、副詞は平仮名と漢字を使い分ける。
では、上記の中で最も注意すべき点のみにしぼって見ていきましょう。
接続詞
×「或いは」→○「あるいは」
×「即ち」→○「すなわち」
×「但し」→○「ただし」
×「尚」→○「なお」
×「並びに」→○「ならびに」
×「又は」→○「または」
×「若しくは」→○「もしくは」
×「以て」→○「もって」
×「及び」→○「および」
これらの接続詞はひらがなで使用すべき、と『記者ハンドブック』には書かれています。
「並びに、又は、及び」あたりは使っている人が多いんじゃないでしょうか。
日本語として間違ってはいませんが、ひらいたほうが親切であると定義されているので、素直に従いましょう。
助詞
×「事」→○「こと」
×「所」→○「ところ」
×「等」→○「など」
×「位」→○「くらい」
これらの助詞も、ひらがなで表記すべきと定義されています。
それだけではなく、事(こと・ごと)、所(ところ・どころ)、等(とう・など)、位(くらい・ぐらい)は、読みかたがひとつではないため、漢字で書いてしまうと「どっちで読むんだ?」となってしまいますよね。
この4つはかなり気をつけないと使ってしまいがちなので、小説を書き終えたら「事・所・等・位」を検索で見つけ出してひらきましょう。
助動詞・補助用語
×「~と言う」→○「~という」
×「その様だ」→○「そのようだ」
×「して行く」→○「していく」
×「して置く」→○「しておく」
×「~に過ぎない」→○「~にすぎない」
×「~に成る」→○「~になる」
×「~かも知れない」→○「~かもしれない」
×「~して見る」→○「~してみる」
このあたりになってくると、「えー! これ漢字で書いたらダメなの!?」と言う人が多くなってきそうですね。
ちなみに補助用語は以下のように定義されています。
動詞・形容詞の本来の意味、用法が薄れて、上に来る文節の補助の働きをするもの
わかりやすいのは「~して見る」とか「~して置く」あたりでしょうか。
「見る」「置く」、どちらも本来の動詞の意味合いは薄れています。
こういった意味を持たない漢字は、ひらがなにしましょう。
形式名詞
×「事」→「こと」
×「時」→「とき」
×「所」→「ところ」
×「内」→「うち」
×「物」→「もの」
×「者」→「もの」
×「訳」→「わけ」
上記の中で、以下のケースのみ漢字でも使用してよいとされています。
これらの名詞が実質的意味をもって使われる場合は、漢字を使ってもよい。例)事と次第によっては、住んでいた所
つまり、具体的な「事柄」、具体的な「場所」を意味する場合は漢字でもよいという意味です。
他にもいくつかありますが、気になる方は『記者ハンドブック』を買ってチェックしてみて下さい。
最近は、文章を積極的に読む人がどんどん減っています。
時代の流れに逆らって小難しい文章を書くのはやめて、漢字の含有率は2~3割程度にしましょう。
小説を書くときの推敲ポイント5 長すぎる文章はわける
小説を書くコツとしてごく当たり前のことではありますが、ひとつの文があまりにも長すぎると、読者が息切れしてしまいます。
例えばこんな文章は、絶対に書いてはいけません。
長すぎる文章を赤く表示してくれるツールでチェックしてみましたが、見ての通り最悪です。
では、ひとつの文として適切な文字数はどのくらいでしょうか?
このブログはだいたい40文字くらいで改行されます。
読者にとって読みやすい文字数も、そのあたりが上限でしょう。
チェック後に真っ赤になっていた文章を、いくつかにわけてみました。
まだ少し赤い部分が残っていますが、大分ましになったと思います。
ただここで注意しなければならないのは、短文ばかりになると文章が稚拙になるということです。
例えば、以下のような文はどうでしょうか。
「今日は天気がよかった。お昼にはうどんを食べた。おいしかった」
文字数が極端に少ないので読みやすいですが、小学生の日記のようになってしまいます。
大事なのは、バランスです。
小説を書くときの推敲ポイント6 誤字脱字は読み上げソフトでチェック
誤字脱字は、書いた本人には中々見つけ出すことができません。
そこに何が書いてあるか知っているので、ちゃんと読んでいるつもりでも、目が滑ってしまうんです。
そのため、他人に読んでもらったり、1週間くらい置いてみたり、紙に印刷したりと、いろいろな方法を試す必要がありました。
ですが今は、読み上げソフトというとても便利なものがあります。
自分が書いた文章を機会に読み上げてもらうと、誤字脱字以外にもおかしいところが一発でわかります。
つまらないミスを防ぐためにも、投稿前には必ず一度試してみて下さい。
まとめ
・同じ単語を近い場所で何度も使わない
・文末が重複していないかチェック
・こそあど言葉、漢字、長い文章は読者にストレスがかかるので減らす
・誤字脱字は読み上げソフトにチェックしてもらう
これらのポイントを踏まえた上で推敲すると、あなたの小説の質は格段にアップするはずです。
ですがひとつだけ覚えておいてもらいたいのは、こういった修正は担当編集さんや校正さんにもできる作業です。
あなたが本当に労力を割くべきなのは、面白い物語を作り出すことであり、品行方正な美文を書くことではありません。
多少誤字脱字があったり、文章におかしいところがあっても、作品が面白ければ「この程度ならこっちで直せるな」と思ってもらえます。
逆に、どんなに非の打ち所のない完璧な文章を書いたとしても、その物語に魅力がなければ最終選考には残れません。
校正や推敲はあくまでも枝や葉の部分、幹ではないということを忘れないで下さい。