ビジネス感覚のないクリエイターが生んだ悲劇
昨日Twitterで、過去に作った同人ゲームが実は大赤字だったと告白しました。
PlayStation Vitaに移植までされたゲームがなんで赤字に?
理由は2つあります。
ゲームの規模を大きくしすぎたこと、自分の人件費をちゃんと計算しなかったことです。
具体的な赤字の額は、だいたい300万くらい
実は『赤い砂堕ちる月』も赤字なんです。
VITA化までしたのにそれはないだろうって
思うかもしれないですが、私の人件費が全然
回収できてません。関わってくださったスタッフの皆様にも、
お友達価格の作業料しかお支払いできませんでした。— 山崎浅吏@書くで稼ぐ!ブログ執筆中 (@yamazakiasari) 2018年10月2日
このつぶやきをしたところ、とても反響がありました。ありがとうございます。
同人活動をしていて、その作品にかかった時間、自分の人件費を考えたことがある人は、どのくらいいますか?
二次創作(パロディ)は、経費のみで読んでもらうという大前提があるので、置いておきます。
でもオリジナルは完全に自分の著作ですから、利益を追求しても問題ないですよね。
『赤い砂堕ちる月』の赤字部分は、主に私の人件費です。
このゲームを完成させるために、商業の仕事を断ったりして1年ほどの時間を作りました。
その間、ほぼ無収入でした。
頑張ってためた貯金から、外注さんへのお支払いと、1年間無職でいる間の生活費を捻出しました。
これ、もしゲームが完成しなかったら、大変なことになってましたよね。
想像するだけで恐ろしいです。
協力してくださったスタッフの皆様のおかげで、なんとか発売までこぎ着け、外注費に関しては回収できました。
回収できなかったのは、私の人件費です。
もし私が1年間普通に働いていたら、いくら稼げていたでしょうか。
30代日本人女性の平均年収が、299万です。
つまり、最低でも300万は稼がないと割に合いませんよね。
同人だから趣味でしょ? 割に合うとか関係なくない?と思った方。
私も半分そう思っていたので、こんな無茶なビジネスを初めてしまったんです。
外注費で数百万ものお金を動かすなんて、そもそも同人のレベルを超えてます。
そんなことを初めてしまったのに、私にはビジネスの素養がまったくなかったんです。
完全にどんぶり勘定でやってしまっていました。
初心者が起業するならコンパクトにが鉄則
『赤い砂堕ちる月』は、私がゲームブランドを立ち上げて起業したようなものです。
でも、今まで書くことしかしてこなかったライターがいきなりビジネスを始めるなんて、あまりにも無謀すぎました。
同人ゲームを作る上で、鉄則だと言われている言葉があります。
絶対に規模を大きくしすぎない。広げれば広げただけ失敗する可能性が高くなる。
これは同人ゲームに限らず、起業でも同じことが言えますよね。
私がしたことは、経営のことなんて少しも知らないのに、コーヒーを淹れるのだけは得意だからとカフェを開業するのと同じです。
『赤い砂堕ちる月』に関しては、とてもありがたいことにVitaに移植され、ここでようやく私の人件費が一部回収できました。
なぜゲームの規模が大きくなってしまったのか
これは、競合相手を同人ゲームサークルではなく、商業ゲームを出している企業に設定してしまったのが原因です。
関わっているスタッフが商業レベルなのに、一般に流通しているゲームと比べてあまりにも劣るようなボリューム、品質では許されないと思ってしまいました。
実は『赤い砂堕ちる月』で私が書いたテキスト量は、過去最大です。
今まで請け負ったどんなゲームのシナリオよりも、分量が多いです。
ざっくりですが、普段の2倍以上は書いてます。
それは、主人公の性格が5種類あるという、このゲームの最大の売りを生み出すために費やされました。
1年間無職になって死ぬ気で執筆したのに、その労力がぱっと見にはわからず、他の商業作品と大してかわらないか、むしろプレイ時間が短いゲームになってしまったんです。
つまり、ちゃんと評価されないところに、最大の労力をつぎ込んでしまっていたんですね。
私にちゃんとビジネスの素養があったら、事前にストップをかけられたはずです。
ゲームライターには基本著作権がない
声優さんは、出演した作品が他の媒体に移植されれば、
そのたびに使用料が発生します。これは過去に、声優の地位向上のために
戦った方たちがいたからです。でもライターはダメです。
作品がその先どんなに売れてもほぼ買い切りです。— 山崎浅吏@書くで稼ぐ!ブログ執筆中 (@yamazakiasari) 2018年10月3日
そもそも、なんでこんな無茶なビジネスを始めたのか?
理由は、今までたくさんのゲームシナリオを執筆してきたのに、どれも自分の財産になっていないことが、悲しかったからです。
クライアントからプロットをもらって書いているなら、多少は割り切れたかもしれません。
ですが、私の場合はストーリー構成から引き受ける場合が大半だったので、ただただ消耗している感が強くなっていきました。
そんな中、どうしても自分の著作、資産が欲しくなったんです。
大赤字にはなったけど、資産は残った
『赤い砂堕ちる月』は確かに赤字ですが、
私の大切な資産になってます。私が唯一著作権を持っているゲームです。
これからまだまだ、活用次第では挽回できます。
こういう物を少しずつ持たないと、消耗するだけで終わります。
— 山崎浅吏@書くで稼ぐ!ブログ執筆中 (@yamazakiasari) 2018年10月3日
私は『赤い砂堕ちる月』というゲームを作ったことを、少しも後悔していません。
ビジネス的に問題があったと、大いに反省はしていますが。
たくさんの方々と一緒にひとつのゲームを作り上げた思い出は宝物ですし、この死線をくぐり抜けたことで、後の仕事がめちゃくちゃ楽になりました。
あえて自分に高い負荷をかけることで成長できたんだと思います。
ライターが著作を持つことの重要性
ライターが自分の著作を持つ方法は簡単です。
小説を書けばいいだけです。
ブログでも、なろうでもかまいません。
まず自分の著作物にしてください。
小説の段階で面白いと感じてもらえなければ、その先もありえません。
— 山崎浅吏@書くで稼ぐ!ブログ執筆中 (@yamazakiasari) 2018年10月3日
私は著作を持つ方法に、商業に匹敵する同人ゲームという大規模ビジネスを選んでしまい、大きな失敗を経験しました。
起業はとにかく低コストで、コンパクトに。
ライターが消耗せず、自分の著作を持ちながら、長く仕事を続ける。
過去に書いた物が、自分を助けてくれる。
その方法がブログであり、小説です。noteでもいいですね。
収益の柱を、なるべくたくさん持ちましょう。
そして、才能や情熱をただ切り売りするのではなく、自分だけの著作、資産を蓄えてください。
赤い砂堕ちる月公式サイトはこちら http://www.land-karte.net/